「いいか、ビジネスの心得は不即不離だ。取引先には巧言令色であるべし。機嫌をそこねたら三拝九拝しろ。接待では牛飲馬食するべからず。しかし、何はなくとも無病息災だぞ。つまり、これが営業部の金科玉条だ」。
 立て続けに慢言放語を聞いてますます頭が痛くなってきた。ここで丁々発止というのも疲れるので、このさい付和雷同ということで、この不得要領な四文字熟語会話に応じることにした。
 「わかりました、部長。これから得意先へ猪突猛進して、獅子奮迅の働きをお目にかけ、最後は画竜天晴で締めます」と、われながら大胆不敵にも厚顔無恥な啖呵を切った。すると部長の目がみるみるウルメイワシのようになり、「むむむ、動物系でまとめたか。鼓舞激励してやろう。おまえのような部下がいれば、うちも武運長久だ。毎日が黄道吉日だといいな」と、がっしりと手を握られた。

・百花繚乱(ひゃっかりょうらん):多くの花がいっぺんに咲き乱れること。
・不即不離(ふそくふり):つかず離れずの関係にあること。
・巧言令色(こうげんれいしょく):巧みな言葉と取りつくろった顔色。
・三拝九拝(さんぱいきゅうはい):何度も頭を下げて頼んだり詫(わ)びたりすること。
・牛飲馬食(ぎゅういんばしょく):牛や馬のようにやたらにたくさん飲み食いすること。
・無病息災(むびょうそくさい):病気もしないで健康で暮らすこと。
・付和雷同(ふわらいどう):主義主張をもたず他人の説にすぐ同調すること。「雷同」は雷が鳴ると応じて山や谷まで鳴り響く」の意。
・不得要領(ふとくようりょう):物事の要点がはっきりしないこと。あいまいでわけのわからないこと。
・不平不満(ふへいふまん):自分が思っているようにいかないので、「何とかしてくれ」と人に言いたい気持ち。
・猪突猛進(ちょとつもうしん):猪のように非常な勢いで突進すること。
・獅子奮迅(ししふんじん):獅子が奮い立ったように、ものすごい勢いで働き、全力をつくすこと。
・画竜天晴(がりょうてんせい):最後の詰(つ)めをうまくやって仕上げること。最後の仕上げ。「絵に画(か)いた竜に睛(ひとみ)を点 じたら、本物の竜になって飛び立った」という中国の故事から。
・大胆不敵(だいたんふてき):度胸がすわっていて敵を全く恐れないこと。
・厚顔無恥(こうがんむち):ずうずうしくて恥知らずなこと。
・鼓舞激励(こぶげきれい):人を励まし元気を出させること。
・武運長久(ぶうんちょうきゅう):戦いにおける良い運が久しく続くこと。
・黄道吉日(こうどうきちにち):何を行ってもうまくいくという日。



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