笑顔があれば千客万来
しかし、この社長は、かつてカンピューターと言われた奇想天外なひらめきで、ビジネス界のカリスマと言われた人物。さらにその温厚篤実な得がたいキャラクターと天衣無縫の笑顔があれば、いつも千客万来、会社経営も順風満帆だった。だからこんなわけのわからない荒唐無稽な訓辞でも、みんなおとなしく聞いているのだ。訓辞はさらに続いていく。
「さてさて、いわゆる一つの熟語という言葉で言い表されているのは、<ふたつ以上の語がよく合わさって、もとの語の意味とはちがった、別の新しい意味ができていること>なんですよ」。
社員たちの間から感嘆の声が洩れる。さすがに人の心をつかむことにかけては当代無双だ。
「日本人の祖先は千数百年前、朝鮮半島の人たちから漢字を教わりました。漢字はご存知の通り、中国で作られたものです。そして、漢字で書かれた中国語の本を読むことも始まったんですね。こうしてわたしたち日本人の使う言葉の中に、中国の言葉や物語、思想などがたくさん入ってきたんですね。漢字だけで書く<四字の熟語>も、やはり、中国から学んだものが大部分です」。
社員たちの顔はみな真剣だ。半信半疑で聞いている者といえば、ぼく一人くらい。いや、ぼくだって、話じたいは四文字熟語に関するタメになる話だと思うけど・・・これがビジネスといったいどういう関係があるわけ?
・奇想天外(きそうてんがい):思いもよらないような変わったこと。
・温厚篤実(おんこうとくじつ):おだやかで誠実で人情のある人柄のこと。
・天衣無縫(てんいむほう):自然のままで明るく無邪気なさま。
・千客万来(せんきゃくばんらい):非常に多くの客がかわるがわるやってくること。
・順風満帆(じゅんぷうまんぱん):物事が順調にスムーズに進むこと。
・荒唐無稽(こうとうむけい):根拠がなく中身もない非現実的なこと。
・当代無双(とうだいむそう):世の中に並び比べる者がいないほど、強いこと。
・半信半疑(はんしんはんぎ):なかば信じ、なかば疑うこと。信じきれない状態。
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